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書籍紹介

 POST(Psychoanalysis Originated Supportive Therapy)は「精神分析の考え方を用いたサポーティブセラピー」です。ここではサポーティブという言葉を「ユーザーの自我を支持する」という意味で使っています。
 ユーザーが抱えている「現実的、具体的な困りごと」について援助しようとするさいに、精神分析的な理解を用いつつ、精神分析以外の介入技法も適宜用いていきます。
 さまざまな場所で行われている多様な対人支援のしごとの中に、精神分析の考え方をどのように「活用」しうるのか、ということを考えて書かれました。つまり、対人支援職に就いている私たちにとっての「現実的、具体的な困りごと」について考えて書かれた本です。
 とはいえ、現実とは、場所により人により異なる姿をしているものです。この本を叩き台にしてそれぞれの体験を語り合い、学び合う機会を重ねていくことが大切だと私たち執筆者は考えています。

(記:関真粧美)

岩倉拓・関真粧美・山口貴史・山崎孝明著

/東畑開人 特別寄稿 ​金剛出版、2023年

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​ 『精神分析の歩き方』というタイトルですが、第Ⅱ部「現地に赴く前に」の6章「独り善がり」の治療者――環境とクライエントのニードを捉える、7章 二つのアセスメント――精神分析中心か? クライエント中心か?、8章「ふつうの面接」を考える――援助法の四象限、9章 モチベーション論――面接の実際問題、は、精神分析的心理療法をセットアップするために必要な事前準備について詳述しています。

 ここを理解できていないがゆえに難航しているケースや治療者をよく見るように思うので、「セラピーに導入したけれど、なかなかうまくいかないな……」と思っている方にお読みいただければと思います。

 8章では、POSTの思想につながる「ふつうの面接」についても論じています。

​(記:山崎孝明)

山崎孝明著 ​金剛出版、2021年

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 キャリアの初期に、本書のもととなった西新宿臨床心理オフィス主催の「能動的アセスメント」のセミナーに参加しており、そこで私は「心理士としていかに機能するか」を学んだように思います。​

 本書は、「心理士がさまざまな職域で日々働いていくうえで、そこで生じた事象を自分なりに考え、見えなかった人間関係や人間のこころを可視化(アセスメント)し,見えるようになった問題を関係者と共有し取り扱っていくこと(マネジメント)が必要とされる。著者らは本書で一貫して精神分析理論を基盤にさまざまな事象を考え、多様な臨床現場でそれを応用していく方法を考える。事例編では、クリニック、学校、児童養護施設、精神科病院での実際の事例を基に4つの架空の事例検討会を再現し、理論を基盤としながら同時に自らのこころを使って考えるという実践感覚を生き生きと伝える」と紹介されています。

 架空事例を提出する発表者に岩倉・湊の両助言者がコメントしていくスタイルで書かれた「事例編」は特におすすめです。「能動的アセスメント」セミナーの一端に触れることができると思います。

 個人的には、本検討会は、この「能動的アセスメント」セミナーを継承・発展させたものだと思っています。源流となる本書もぜひお読みいただければ。

​(記:山崎孝明)

湊真季子・岩倉拓・小尻与志乃・菊池恭子著 ​岩崎学術出版社、2014年

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 POSTの最大の特徴は「精神分析的な理解を用いる」ことです。具体的な介入としては精神分析以外の技法を用いることがありますが、そうした状況についてもユーザーの状態についても、常に精神分析的な理解を形作り、こころに置いておくようにします。
 では、どうしたら精神分析的な理解を形作ることができるようになるのでしょうか?その手がかりのひとつとしてお勧めしたいのがこの本です。「若手の臨床家ほど精神分析的知識の応用・実践的使用が求められている実情」を視野にいれつつ書かれた本であり、「力動フォーミュレーションという方法はそうした若手の臨床家が直面する実状に対応する訓練としても最適」だと思います。読む本というより使い倒す本です。この本を使ったオンライン読書会を身近な人と作り、一緒に読み進めていくこともお勧めです。自習のための教材を無料でダウンロードできるところも良いです。

(記:関真粧美)

妙木浩之監修 小林陵・東啓吾編著

​岩崎学術出版社、2023年

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